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山桜

山桜は、この季節、遠く山を見ると、山のあちこちにまるでパッチワークのような淡い桜色を演出する存在でした。
そんな幻のような存在がまさか青海波にやってこようとは・・・。

梅の花を持ってきてくださった飯島芍薬園の飯島さんが、今日ふらりとやってきました。
予約もなく、まさにふらりと。
山桜の束を持って。

一目で山桜と分かりました。こんな近くで見たこともないくせにね。

今までにない枝を抱えてのご来店に、驚き、感激いたしましたが、ご本人は普段と変わらぬ様子。



桜折る馬鹿。梅切らぬ馬鹿。

何ゆえ桜を????

「見納めですから」

彼はそう言って渡してくれました。
「見納め?これからようやく開く。そんなときめきを予感させる蕾たちなのに?」

今月の酒と刺身を頼まれ、静かに身を置き、心地よさ気に刺身と酒を楽しんでいる彼になかなか話しかけられず、タイミングを見計らってようやく声をかけました。

「山桜はどこのですか?」

すると、丁寧に説明してくださいました。

この山桜は、彼の畑とお隣さんの畑のとの間に、知らぬ間に成長した山桜です。
彼が小さい頃からあって、年とともに大きく成長し、今では大人が両腕でも抱え切れない大きさになったとか。
お隣さんとの間とはいえ、どうやら彼の畑にしっかり根付いていたらしく、その成長振りと、毎年計ったように見事な花を咲かせてくれる山桜は、飯島家だけにしか知られない大切で密やかな存在のようでした。

畑には野菜たちが植えられます。
大切なはずだった山桜は大きくなるにつれて栄養も大きく必要になりました。
畑の栄養も吸収してしまうようになったのです。

「桜を切る。根元から」

自分の畑だけじゃない、お隣さんの畑の栄養までも山桜は吸収してしまうのです。
「よそ様に迷惑は掛けられない」そう言われて、涙涙で根元から伐採しました。

根元から伐採された木はもう枯れてくしかないそうです。


三日かけて切られた山桜のほんの一部を持って、今日、彼は電車を乗り継ぎやってきてくれました。
ほんの一部とはいえ、そりゃ大きな束でしたよ。
一体何に生けたら良いのか途方にくれるほどの束でしたよ。

ありがとう飯島さん。
そしてありがとう山桜。

少しでも、長生きしてくれるように、長生きできる薬を水に入れ、枝がゆったりできるよう、本来は花器なのに傘立てと使っていた大きな花器に入れました。

これから花が開きます。
青海波にいらしたお客様が、ソメイヨシノと違う、葉と共に花開く自然な山桜を、その慈しみの心で愛でてくださったらどんなに嬉しいことでしょうか。

彼は言いました。
「一言で言うと、この山桜は私にとって、慈。なのです」と。

彼は、この桜の枝もこれから芽が出る野菜たちの支柱に再利用する予定だとか。
寂しいはずなのに、そうやって生かしていく彼の混じりのないやさしさ、その心のまっすぐな透明感に打たれた夜でした。



「飯島さん、今日ホントは別にのまなくったて良かったんでしょ。ほんとはただこの桜を持って来たかった。ってそれだけなんでしょ」


彼はにっこり笑って返しました。


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